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京のしらべ その三

「うつわ」その(一)

  葵まつりも終わりました。牛車にのったみやび達が、都大路を練り歩く姿は往時をしのばせるほど、みやびやかなものであったことでございましょう。

京料理の器には、焼き物と塗物があり、焼き物にも磁器と陶器がございます。俗にいう清水焼きは薄くて固い磁器、透き通るような白地に藍の色がよく似合い、伝統的な気品を感じさせます。それに対して陶器は、どろ物暖かい感じと、友禅にも似た絵柄と色合が美しい。

京都の土というものはなく、近隣三箇所の土を合わせ菊もみを丁寧にやり、中の気泡をすっかり出してろくろにかけます。手びねりもまた味なものでございます。京都には数多い陶工が居り、たくさんの窯場があります。半年がかりで造り上げた土器を登りがまにいれてゆく、温度の高低によって並べてゆく段階があります。火を入れる。何千度という炎の流れを幾日も見守り続けて命をかけた作品の出来上がりを待ちます。「ひとかま当てる」の古語もそこから出たもの、柿右衛門のお話も有名なむかしばなしでございます。

現在は登りがまは廃止され、山科に清水団地と銘うって陶芸の町が造られました。全てが電気、ガスの窯になり温度調整も出来るようになりましたけれど、それだけに現代的な苦労、研究が進んで参ったわけでございます。友禅の絵師と同じように陶工の絵付けも焼きあがりのできばえは冥利につきることなのでございましょう。一つの茶碗に四色の柄があれば呉須の青から焼き、茶、みどり、赤、黄と熱の低い順に素焼きから数えて上ぐするまで七回窯に入ることになります。おろそかには扱えません。

京都には美大を出た豆陶芸家がたくさんいます。年に一度それらの人達を育てるための作品展があります。いつの間にか幾つかの数になり、私の小さなコレクションとなりました。お店の棚で皆様のお目に止まりますと、お手にとって楽しんでいただいております。